小学校にあがる前

わたしは物心ついた時からカラフルなものや食べ物をモチーフにしたものに相当な興味を持っていた。その兆しが見え始めたのが日本中の幼児が一度は通る道であるやなせたかし先生のアンパンマンシリーズに触れた時である。

幼児たちに好きなキャラクターをきけばだいたいは主役であるアンパンマンかあるいはハンサムなしょくぱんまん、少し変わりダネを好む子供ならカレーパンマンなどを挙げるであろう。かわいらしいルックスのメロンパンナちゃんなども外せない。アウトローな雰囲気に憧れを抱く子、あるいは毎回趣向を凝らしたマシンを簡単に壊されている様子に胸を打たれるような感受性の鋭い子はきっての悪役ばいきんまんを選ぶかもしれない。前置きが長くなったがわたしが好んだのはもっぱら

 

」であった。

 

アンパンマンを幼児のころに見たっきりでもうそれ以上の記憶がないという寂しい大人諸君の中にはこのようなキャラクターの名を聞いても全くピンとこない者も少なくないだろう。権利の都合上画像は載せないでおくがググればすぐ見つかるのでぜひ各人で調べてみてほしい。なぜかあの7ういろうのグループ感が幼きわたしの目には非常に魅力的に映ったのである。これが多分今のジャニーズおたくとしての私の礎を築いたのだと思われる。ゆずういろうのどことなく冷めたまなざしは鼻にゆずの果実丸ごとを突っ込まれている悲哀からくるものであろうか。桜ういろうが紅一点というのも気になる点である。サークルクラッシャー的存在なのではなかろうか。彼女の行いによりういろうまんというグループの存続にかかわるような事態が起きないことを祈るばかりだ。

 

また、一丁前にセーラームーンのような女児アニメにも深い関心を抱いていた。そのきっかけが小学生向け雑誌である。私は4歳のころからいきなり「小学1年生」をとばして「小学2年生」を読み始めた。だいたい祖母が買ってくれていたと思う。いつもついている紙製の付録はすぐに本から切り離しリビングの机の上におもむろに置いておく。すると父が夜中に組み立ててくれていたのだ。父からすれば小学生向けとはいえかなり時間と手間のかかることを終業後にやるのは実に面倒だったであろう。申し訳ないことをしたものである。そこに載っていたのが「セーラームーン(実写)」、「ふたりはプリキュア」「ぴちぴちピッチ」「ふしぎ星のふたご姫」「シュガシュガルーン」「おジャ魔女どれみ」などである。いま思えば戦士、人魚、お姫様、魔女見習いなど実にバリエーション豊かな魔法少女がいるものである。

とくにセーラームーンの力は絶大で、このおかげでわたしは太陽系の惑星をおぼえカタカナも読めるようになった。そしてコスプレへの情熱を高めたのだった。セーラームーンになる夢はその13年後に叶うこととなる。

 

わたしが血眼でテレビにかじりついていたのを見た母がセーラームーンの服を縫ってくれたのには驚いた。ちゃんとショッキングピンクのレッグカバーまでついていたので気を失うかのようなうれしさだった。さっそくガチャガチャでブローチ(コズミックハートコンパクト)を手に入れ毎日着替えていた。おたふくカゼをひいてもなお着続けたが、一体どこに顔を腫らした3等身のセーラームーンがあろうか。月野うさぎへの侮辱も甚だしい。そういう自分のビジュアルが出来上がっていないときには変身しないのがコスプレイヤーの定石である。この時の写真は今でもアルバムにしまわれことごとく身内に笑われ続けている。